犬の特発性てんかんの診断フロー
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てんかん発作と非てんかん性発作障害の鑑別ポイント
てんかん発作の場合 持続時間 一般に数十秒から数分(5分以内)。ミオクロニー発作や脱力発作は瞬間的(数秒)。 意識障害 多くの場合意識障害あり。焦点性発作の一部では意識障害なし。 自律神経徴候 流涎や瞳孔拡大、失禁などを伴うことが多い。 発作後徴候 認知障害や旋回、徘徊、疾走、不全麻痺、異常な食欲、視覚障害など。 けいれん・運動徴候 必ず毎回同じ部位から始まる。 -
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血液検査・尿検査で異常
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年齢が範囲外 神経学的検査で異常
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勧められる場合
- 初発発作年齢が6ヵ月未満あるいは7歳以上
- 発作間欠期に神経学的検査で頭蓋内病変が示唆される
- てんかん重積状態あるいは群発発作を示す
- 特発性てんかんと診断したが,単剤での抗てんかん発作薬療法でコントロール不良
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5
胆汁酸 明らかな異常なし MRI 構造的病変の存在 CSF 総有核細胞数*増多あるいは蛋白増加、またはその両方 特発性てんかんが疑われる犬の11~15%で総有核細胞数*増(6-10cells/μL)、
軽度の蛋白濃度増加(32-58mg/dL)が認められる*WBCをカウントすることで問題ない。赤血球数はカウントしない。
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胆汁酸 明らかな異常なし MRI 明らかな構造的病変が認められない CSF 正常(総有核細胞数* ≦5cell/μL 蛋白<25mg/dL) -
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飼い主様あるいは担当医が確定診断を希望する場合
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てんかん性異常波または発作時脳波を検出されれば、特発性てんかんと確定
脳波に異常がなくてもTierⅠとⅡで異常がなければ、特発性てんかんと確定 -
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脳波に異常があり、てんかんと診断されるが、特発性てんかんの条件を完全に満たさない場合(発症年齢が<6カ月齢あるいは≧7歳など)
a 血液検査項目
CBC, Na, K, Cl, Ca, P, ALT, ALP, Bil, Cre, BUN, TP, Alb, Glu, T-Cho, TG, 空腹時の総胆汁酸 または NH3b 尿検査項目
比重、蛋白、糖、pH、沈査細胞診c MRIは発作関連性の変化が認められた場合は可能であれば発作のない16週後に再検査 d CSFは発作直後に軽度の異常が認められることがあり、可能であれば発作のない6週後に再検査